国内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な拡大に伴い、令和2年4月7日に安倍晋三内閣総理大臣から7都府県に対し緊急事態宣言が発出され、同4月16日には対象が全国に拡大された。このような中、同4月9日に日本救急医学会と日本臨床救急医学会は両代表理事声明として、救急医療の危機を訴えた。このような対応によりCOVID-19新規患者数の全国的な減少がみられ、5月14日に39県で、続いて5月26日には東京都を含む5都道県での緊急事態宣言が解除され、6月19日には県境をまたぐ移動の自粛要請も全面的に解除された。しかし、その後は新規陽性者数が再び増加しており、7月2日には東京都で新規陽性者が107名となり第二波や第三波への警戒感が急速に高まっている。
一方、いわゆる3密(密閉、密集、密接)を避けがたい環境の中で在宅医療や介護サービスに従事する医療スタッフ・介護スタッフの業務の在り方に関しても、解決すべき問題が山積している。また、高齢者や身体的な合併症を有する患者が主たる対象となる在宅医療や在宅ケアでは、深刻な課題が明らかである。具体的には、患者に救急医療の提供が必要となった時、特に発熱や呼吸器症状を呈した時の救急対応、新型コロナウイルスに感染してもなお在宅での療養を希望する場合の対応、医療スタッフや介護スタッフへの感染予防教育、感染予防のための防護具の確保等々の課題である。
日本医師会COVID-19有識者の中で、我々は在宅、介護施設で治療、療養中の患者のために提案を公表した。
- 「新型コロナウイルス感染拡大による在宅医療、介護サービスへの影響と対策に向けての提案」(2020年4月28日)
- 「在宅医療と介護におけるCOVID-19対応の課題と解決策、提言」(2020年5月21日)
今回は上記の中間報告に内容に加え、実際のデータ等を追加して解決のためのより具体的な提案や解決法を検討した。今回の検討から、特に①衛生材料、および感染防護具等の安定的で確実な供給体制の確保、および標準的感染予防策の教育の徹底とそれにかかわる財政的支援や情報提供などの行政からの支援の必要性、②介護職員の確保、連携体制の推進や介護系事業所の機能維持のための施策、③オンラインでの非接触介護を目的としたICT導入を推進するための財政支援等の重要性が改めて認識された。さらに、在宅医療の患者で新型コロナウイルス陽性例の対応、例えば医療機関ではなく在宅での治療を希望する場合の対応、その場合の考え方についての手順を示したので最終報告として公表することにする。前述のように第二波、第三波への警戒感が高まる中、在宅医療や介護サービスを維持するため、本報告書の提言が実行されることを強く希望する。